3. 先行する米国大学の知財マネジメントはなぜ発展したか?
さて、我が国が『知財立国』のモデルとして位置づけている米国では、なぜ大学の知財マネジメントが飛躍的に発展したのであろうか?参考までに直近の米国大学の知財取得とその移転状況を付記する。
- 15,510件の発明開示
- 7,921件の特許出願、3,933件の特許登録
- 4,516件の新規ライセンス契約(総計25,979件)
- 1,310MMドルのライセンス収入(151件は1MMドル以上の収入)
- 374社の大学発ベンチャー設立
- 472の新製品販売
- (AUTM annual survey、2003年)
大学の知財獲得とその技術移転がこれほどの規模にまで拡大してきた理由は諸説あるが、ひとつには、バイドール法制定(1980年)によって大学が知財マネジメントの自由度を獲得した時期と、バイオという一大産業が遺伝子組換え等の基盤技術の確立によって急成長した時期が重なったことが挙げられる。米国に本部をおくAUTM (Association of University Technology Managers) の調査でも、北米の大学が得ているロイヤリティ収入のうち、約7割はバイオ分野の技術のライセンスによることが明らかとなっている。さらに、大学の知財とバイオ産業が強く結びついた理由として、@医薬ターゲットやシーズとなる基本物質(疾患関連タンパクやサイトカイン等)は上流に位置する大学で発見されることが多く、バイオベンチャーや製薬企業は大学から基本特許のライセンスを受けて製品化する必要があること、A特許の権利範囲が比較的広く、大学で取得された特許が最終製品に大きな影響を持つこと、B医薬として上市された場合の市場規模が場合によっては1,000億円/年を越えるほど大きいこと等によって、いくつかの大学は巨額のロイヤリティ収入を生み出す"ホームラン特許"を保有するに至っている(ただし、ホームラン特許を保有できる確率は、僅か0.6%であるが…) 。
その後も、ヒトゲノム解析やインターネットなど、新しい科学技術領域が生まれ産業として成長する波をとらえて、米国大学の技術移転は成長してきたのである。