産学連携を語る

大学における知的財産マネジメントの意義
4. 米国の大学の知財マネジメント手法はスタンダードか?
これまで、筆者が接してきた米国の大学の技術移転機関(TLO)関係者の話を集約すると、米国の大学の知財マネジメントの特徴は下記のように整理される。
  1. 大学内で創出された知財は、企業からの委託研究の成果であっても大学に帰属し、企業がこれを実施するには別途ライセンス契約が必要である。
  2. 共同研究・受託研究費の獲得よりも、ライセンスによる契約一時金やロイヤリティ/エクイティ獲得を重視する。

    →背景にある考え方:
    (a) 企業からの委託研究について、企業は資金と大まかな課題は提供するものの、実際に課題を解決する"知"を生み出したのは大学の研究者であり、成果を得るまでの過程で相当な税金や大学の資金が投入されているので、知財は当然のこととして大学のものであり、大学自らがその最大活用を図るべきである。
    (b)TLOのスタッフは、共同研究・受託研究費の獲得よりもライセンス収入の獲得を重視する傾向が強い 。
一方で、例えばドイツの大学や公的研究機関、技術移転機関の活動を大まかにまとめてみると、ドイツの大学や公的研究機関の知財マネジメントの特徴は下記のように整理される。
  1. 大学内で創出された知財(企業からの委託研究の成果も含む)を、比較的簡単に企業に渡してしまう(ライセンスのみならず、譲渡も)。
  2. ライセンス収入には多くを期待せず、むしろ共同研究・受託研究費の獲得を重視する傾向がある。

    →背景にある考え方:
    (a)最終的に知財で儲けるのは企業なので、大学が知財保有とそのハンドリングにこだわりすぎても意味がない。
    (b)ライセンス収入を稼ぐよりも、大学として共同研究・受託研究費を獲得する方を重視し、企業側もこれを望んでいる。
筆者が参加したAUTM Graduate Course(2003年12月)という研修コースでは、上記のような米国大学と欧州大学のスタンスの違いに対して、世界的な某化学メーカーの外部技術導入の責任者から、「米国の大学は、バイドール法に起因して大学の権利主張が強く、スムーズな技術移転が進まない場合も生じている。ドイツや日本のように、権利譲渡も含めて柔軟に対応して欲しい」といった主旨の発言があり、これに対して、米国大学の技術移転関係者からは、「それほど自社が保有したい技術(特許)であれば、そもそもなぜ大学に研究委託するのか」といった発言が返されるなど、大学の知財を巡る基本的考え方について白熱したディスカッションが展開された。

以上のように、世界規模で見ると、大学における知財の取り扱いとその背景にある考え方は様々である。従って、知財立国の実現を担う大学での知財マネジメントのあり方については、各国の状況・経験を参考にしつつも、我が国固有の産学連携の風土や歴史的経緯、さらには今後の科学技術や産業の発展の方向性を十分に踏まえたものである必要があろう。

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