産学連携を語る

大学における知的財産マネジメントの意義

5. 大学の知財マネジメントの究極のゴールとは何か?
2.で述べた通り、大学が特許を出願・取得する意味は、研究成果を社会に普及させる際の足がかりを創ることである。従って、「大学で創出されたユニークな発明を、如何に早く、そして広く社会に普及させることができるか?」という点を重視しつつ活動することとなる。この判断基準は、発明の開示から特許出願、マーケティング、ライセンススキームの構築、ライセンス契約交渉等々、マネジメント全体に渡って、判断が求められる局面で"究極の"拠り所とも言える。例えば、ある技術についてライセンススキームを検討する場合、例えば、1社に対して独占実施権を付与すべきか(Exclusive License)、非独占で要望があればどこにでも実施権を付与すべきか(Non-exclusive License)、あるいは数社に限定してライセンスすべきか(Co-exclusive License)、のいずれを選択すべきかは、技術の特徴、実施形態、業界の慣習、競合状況、ライセンシー候補企業の意欲、等々を勘案しつつ、最終的には「どうすれば早く、広く社会に広まるか」という点を勘案して判断するのである。この判断基準は、真理を探究しそれを広く社会に公表するという大学のミッションとも親和性が高く、筆者自身の経験でも、迷ったときにこの基準に基づいて判断すれば、大きく間違うことはないと認識している。

6. おわりに  
大学の知財マネジメントは緒に着いたばかりであり、今後様々な状況が想定されるため、一律に固定的な考えで対応すべきでない。大学は、大学で創出されたユニークな技術を可能な限り早く広く社会に普及させることができるよう、より望ましい知財のマネジメントのあり方や手段を柔軟な発想で追求すべきである。同時に企業は、社外のイノベーティブな技術の獲得のため視野を広げておくと共に、大学で創出された言わば"公共財"の速やかな社会普及と自社利益獲得の両立点を見極めつつ、事業展開することが求められる。  

この理想を追求するためには、産業界と大学の双方が現実をしっかりと認識し、継続的に対話を重ねていくプロセスそのものが極めて重要であろう。日本よりも30年以上先行する米国においても標準的な方法が存在するわけではなく、その時々の社会環境の変化、あるいは新しい技術の登場に応じて、知財マネジメントの"あるべき姿"は進化し続けており、AUTMなどを舞台として継続的な議論とコンセンサス作りが重ねられているのである。この取り組みの姿勢や議論の内容は、我々にも学ぶところが非常に大きい。  

我が国の大学の知財マネジメントのあり方について、これから益々活発な議論が展開されることを強く願う次第である。 

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