産学連携を語る

大学における知的財産マネジメントの意義
Photo 九州大学ビジネススクール助教授 同知的財産本部技術移転Gr.リーダー 高田仁先生

九州大学において産学連携の推進に活躍されている高田仁先生に、大学における知的財産のマネジメントについてご意見を伺いました。


1. はじめに
平成16年4月、国立大学の法人化に伴い、多くの大学で従来は個人帰属であった知的財産が機関帰属へと180度方向転換し、大学が組織として一体的・主体的に知財をマネジメントする時代に突入した。また、平成15年からスタートした文部科学省知的財産本部整備事業によって、全国34の大学に知的財産本部が設置され、組織的な知財マネジメント体制の整備が進んでいる。大学が知財をマネジメントする動きは、近年の産学連携ブームと共鳴し、より拡大する傾向にある。

このとき、大学はどのような役割を果たすべきなのか、あるいは目標に対して、各大学の現場は適切に機能しているのか。はたまた、大学の連携相手である産業界はこの新しい変化をどのように認識し対応しようとしているのか。当然のことながら各大学の議論と実践は始まったばかりなので成否を結論づけるのは時期尚早である。ただ、大学の知財マネジメントの現場で生じていることに基づいて出来る限り客観的かつ冷静に議論を重ねるために、私見を述べさせて頂きたい。

2. そもそも大学における知財とは?
「大学における知財とは?」という命題について考察する前に、「そもそも大学とは?」という点について確認しておきたい。多くの大学が、法人化に伴って大学の役割を再度明確化し、多くは、@教育、A研究、B社会貢献、を大きな柱として挙げている。中でも、真理を探究し知のフロンティアを切り開くことは大学に課せられた最重要ミッションの1つであり、10年、20年、時には50年先を見て人類に貢献しうる基礎研究を行うのが大学の役割である。

従って、知財マネジメントや産学連携も前述の大学のミッションの延長上に位置づけられるべきであろう。通常、企業の場合、知財は第一義的に自社の事業を守る手段として位置づけられるものであり、副次的な目的としてライセンス等による知財自体の事業化・収益化がとらえられている。一方、大学の場合は自ら事業を行うことはないため、知財マネジメントは専ら産業界に研究成果の利用を促すための手段として位置づけられる。折角、唯一無二の優れた研究成果があったとしても、特許がないまま論文発表されてしまったため、世界中のどの企業も自由に利用できる状態となってしまえば、結果的に事業化のための投資を呼び込むことが出来ず、この研究成果は社会に普及しないまま埋もれてしまうことも起こりうる。一方、特許を出願せずに論文で公開する方が、成果が迅速かつ広範に普及する場合もある。この場合は特許出願を手控えるべきであろうし、筆者も大学の研究者に対して「この技術は特許出願をせずに論文で発表したほうが良いのでは?」という提案をした経験が一度ならずある。いずれにせよ、大学の知財はあくまでも研究成果の社会普及を促すための足がかりを提供するものである。

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